言語

アルトリアに学ぶ配当再投資の重要性

2019年6月2日

配当再投資によって卓越したリターンを得る

高配当株の魅力は、それが日々の生活を支えるインカムゲイン源となるばかりではなく、配当再投資によって将来のリターンを大きく加速させることができる点です。

アメリカの高額配当株として有名なタバコ会社アルトリア(旧社名フィリップモリス)は配当再投資の重要性を学ぶのに最も適した例と言えるでしょう。ジェレミー・シーゲルの有名な著書「株式投資」、「株式投資の未来」[1]、[2]に、アルトリアが配当再投資をしてきた長期投資家にS&P500を圧倒するリターンを投資家にもたらしたことが述べられています。この記事では配当を再投資した場合とそうでない場合のリターンの違いを学び、例として最近10年間のアルトリアのリターンをそれぞれの場合で比べてみます。

ある投資期間内のある日\(i\)のリターン\(R\)(%)は一般的に次の式で定義できます。

\(R(\%)=\left(\frac{A_i}{A_1}-1\right) \times 100\)

\(A_i\)はある日\(i\)における資産価値、\(A_1\)は投資期間の初日の資産価値です。以下で配当再投資を行わなかった場合と行った場合について\(A_i\)がどのように計算されるか見てみましょう。

配当再投資をしなかった場合のリターン:単利

配当再投資をしない場合のある日の資産価値\(A_i\)は終値\(p_i\)とその日までに受け取った配当金の合計に保有株数を掛けた数です。配当再投資をしない場合は保有株数は初日における保有数\(n_1\)から増えません。\(A_i\)はこれらの数を用いて

\(A_i=n_1p_i +n_1\sum_{j\leq i}d_j\) (配当再投資なし)

で与えられます。\(d_j\)は日付\(j\)に支給される配当金であり、

\(d_j=\left\{\begin{array}{cc}D_j & (配当落日) \\ 0 & (それ以外)\end{array}\right.\)

です。

配当再投資をした場合のリターン

一方、配当再投資をした場合のある日\(i\)の資産\(A_i\)は以下で与えられます。

\(A_i=n_ip_i\),

\(n_i=n_1\left(1+\frac{d_1}{p_1}\right)\left(1+\frac{d_2}{p_2}\right) \cdots \left(1+\frac{d_i}{p_i}\right)\)

配当再投資によって投資初日の株数が\(n_1\)よりも増えているのが重要な点です。初日の保有数は\(n_1\)なので、日付1に配当金を合計\(n_1d_1\)もらうことができます。支給された配当金全額を再投資すると\(n_1d_1/p_1\)株新規購入されます。ここで\(p_1\)は日付1の終値です。配当再投資によって保有数は

\(n_1+\frac{n_1d_1}{p_1}=n_1(1+\frac{d_1}{p_1})\)

に増えます。配当\(d_1\)を再投資して保有株数が増えたおかげで、日付2に支給される配当金の合計は\(n_1d_2\)ではなく\(n_1(1+d_1/p_1)\times d_2\)となりました。同様にこの全額を再投資することで保有株数は

\(\begin{array}{l}n_1\left(1+\frac{d_1}{p_1}\right)+\frac{n_1\left(1+\frac{d_1}{p_1}\right)d_2}{p_2}\\=n_1\left(1+\frac{d_1}{p_1}\right)\left(1+\frac{d_2}{p_2}\right)\end{array}\)

となります。同様の計算を繰り返すと日付\(i\)における保有株数\(n_i\)を導くことができます。支給配当金の総額は保有株数と一株あたりの配当金の積で与えられます。保有株数を支給配当金総額を増幅させる倍率として考えると、配当再投資をした場合は倍率が積で増えます。これを複利といいます。複利配当再投資をしない場合倍率は初日の保有数\(n_1\)で常に一定であり、これを単利と呼びます。複利と単利の違いが将来のリターンに決定的な差をもたらすことを以下の例でみてみましょう。

アルトリアの最近10年のリターン

下の図は期間2009年5月8日から2019年5月8日における、アルトリア(ティッカーシンボルMO)とステートストリート社のS&P500インデックス連動ETF(ティッカーシンボルSPY)のリターン(%)を比較した図です。PythonのPandas datareaderライブラリを用いて米国Yahoo! Financeの終値、配当金、調整後終値を参照して作図しています。技術的な詳細は別の記事で触れたいと思います。

青線と緑線はそれぞれ配当再投資をした場合としなかった場合のMOのリターンです。オレンジ線は配当再投資をした場合のSPYのリターンです。配当再投資をした場合のリターンは調整後終値を用いて簡単に計算できます。詳しくはこの記事をご覧になってください。(調整後終値を用いたトータルリターンの計算、https://python-investor.com/2019/05/12/post-103/

青線: 配当再投資をした場合のアルトリア(MO)のリターン。緑線: 配当再投資をしなかった場合のMOのリターン。オレンジ線:配当再投資をした場合のState Street S&P500インデックス連動ETF(SPY)のリターン。経費は考慮されていない。

アルトリアのリターンは驚愕的です。なんと配当再投資をしない場合においてですら、そのリターン325%(緑)は配当再投資をした場合のSPY(287%、オレンジ)を上回りました。配当再投資をした場合のアルトリアのリターンは更に高く、407%でした。配当再投資をすることで80%ものリターンを上乗せすることができたのです。

まとめ

配当再投資を行わなかった場合のリターンは単利で、行った場合のリターンは複利で増加します。配当再投資を行うことで保有株数が増え、それによって次回の配当金支給総額が増え、それをさらに再投資することで保有株数が増える、という好循環が驚異的なリターンを投資家にもたらします。

[1] ジェレミー・シーゲル, 株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド 第4版, 日経BP, 2008.
[Bibtex]
@book{Siegel_SL_jp,
title = "株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド 第4版",
author = "ジェレミー・シーゲル",
publisher = "日経BP",
year = "2008"
}
[2] ジェレミー・シーゲル, 株式投資の未来 永続する会社が本当の利益をもたらす, 日経BP, 2018.
[Bibtex]
@book{Siegel_FI_jp,
title = "株式投資の未来 永続する会社が本当の利益をもたらす",
author = "ジェレミー・シーゲル",
publisher = "日経BP",
year = "2018"
}